『女教皇ヨハンナ』を読みました
この物語の主人公は、優れた知性の持ち主で、学ぶことを切望する少女、ヨハンナです。
上巻はヨハンナの少女時代の話です。
物語の舞台は9世紀。
女は男より劣っている存在とされ、教育は男だけのものでした。女に勉学が許されていないこの時代に、ヨハンナが学ぶことは大変な苦難の連続。
本を読んでいただけで親から鞭でめった打ちにされたり、(特例で認められた)学校への入学後も教師や同級生から嫌がらせを受けたりします。
前半パートは読んでいて本当につらい……(自分が良い成績を取っても親に無視されたり、進学を猛反対された時を思い出しました。)
反対に、彼女の知性を認め、導いてくれる人物も登場し、彼女の人生に希望を灯します。(めちゃくちゃいい男が登場します!読んでくれ……!)
さて、ある事件をきっかけにヨハンナは全く別人として人生を歩むことになります。下巻ではヨハンナは男装し、男性として生活します。
ローマに赴き、女性であった時には手に入れることができなかった称賛を得、名声を高めていきます。やがて彼女は、教皇庁の権力争いに巻き込まれていきます。
そして、ついには教皇の座に登りつめることになります。
女性の人生が今よりももっと困難な時代に、強い意志で人生を切り拓いていくヨハンナに勇気づけられます。読み応えがあってものすごく面白い本です。
ぜひ読んでみて下さい。
百島王国物語を読みました
『百島王国物語』佐藤二葉 著(星海社)を読みました。
美しい多島海の王国を舞台に、歌声や楽器で音楽を奏で、風や火や水など森羅万象を操る魔術師の物語です。
主人公や魔術師たちの魔術が生み出す現象の描写が、とても鮮やかで印象的です。
まるで音楽を聴いている時に湧き起こるイメージや皮膚に感じるような冷たさや感触、頭や心の中だけにあった経験が、魔術によって実際の現象として目の前に現されているかようで、個人的にすごく気に入っています。
物語の中で、魔術を行ううえで理性はとても重要で、感情は禁術に関係があるとして、ただ楽しみのために歌ったり、自由に音楽を奏でて喜びを得ることは、逸脱を誘い禁を犯すことを促すとされています。
音楽の愉楽に身を任せて理性を手放してしまうという主人公の恐れは、物語が進むにつれ、理性の支配に任せて自分を手放してしまう、と反転します。
「理性と感情」の関係は、そのまま「王国と魔術」の関係に当てはまります。
王政の統治の手段としての魔術であり、人々にとっての喜びや祈りである音楽。
イメージはできるけど、実際どんな音が鳴ってるのかめちゃめちゃ気になります…!
すごくおすすめですので、ぜひ読んでみて下さい。